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当山所蔵「重文 元版普寧蔵」(元版一切経)の調査
観音さまのご功徳を語る『観音経』など、仏さまのみ教えは種々様々な経典に綴られている。それらを集成したものを「一切経(大蔵経)」と総称する。一切経は膨大な巻数に及ぶことから、その書写・印刷、あるいは輸出入は国家や宗門の大事業として行われ、中国においては、宋時代以降にしばしば開版された。
当山には、中国・元時代に刷られた一切経(元版一切経)が伝来している。これは中国杭州の普寧寺を本部としてつくられたことから、「普寧蔵」とも称される一切経である。浅草寺蔵の「普寧蔵」は5428帖から成り、各地に現存する「普寧蔵」のなかでも、特に当山のものは世界最大の規模を誇る。
同本は、もともと鎌倉の鶴岡八幡宮が所蔵しており、明治時代初期の廃仏毀釈に際して遺棄されてしまうところであった。しかし、篤信の尼・貞運が、新門辰五郎らの助けを得て当山に寄進し、当山の明治最初の貫首・唯我韶舜大僧正が受け入れ、大切に伝えてきたのである。明治32年(1899)に国宝(旧国宝)に指定され、やがて重要文化財となり、辛くも第二次世界大戦の戦禍も乗り越え現在に至る。
ところで同本については、当山の学僧で、大正大学教授を務められた故上村真肇師が精査され、その概要が世に知られることになった。しかし師は研究の半ばで遷化され、以来半世紀ほどの間、本格的な調査が行われることはなかった。
この度ご縁を頂戴して、東京大学名誉教授・一般財団法人東方学会理事長であられる斎藤明先生、国際仏教学大学院大学教授であられる池麗梅先生を首班とする研究グループにより、全帖の撮影を含めた、総合調査が実施される運びとなった。昨年5月から準備を開始し、去る10月から実際の調査を進めており、これから継続的に数か年に及ぶ大きなプロジェクトである。今回の精査を通して、当山の「普寧蔵」の宗教史的・文化史的・印刷史的な位置付けが明確になるとともに、広く一切経そのものの研究の進展の一助に繋がると確信している。また、東京芝・増上寺が所蔵する、「普寧蔵」を含む一切経群が「ユネスコ 世界の記憶遺産」に登録されていることを鑑みると、今回の精査を通して、重要文化財以上の評価を得られるのではないかと考えている。
なお、平成30・31年度に2ケ年度に渡り、株式会社修護により、当山「普寧蔵」の全帖にわたる小修補・クリーニングが実施された。その結果、保存状態が良好であり、今回の調査の受け入れが可能であったことも添えておく。

